2018.01.30(火)委員会

【委員会レポート】女性指導者のためのコーチングクリニック(普及育成委員会)Vol.1


 日本陸連普及育成委員会が主催する第22回JAAFコーチングクリニックが1月7日、日本女子体育大学(東京都世田谷区)で行われました。今回は、新たな試みとして、「女性指導者のためのコーチングクリニック」と題し、女性指導者および、今後指導に関わることを目指す女性を対象としたプログラムに。跳躍種目の実技講習のほか、元トップアスリートによるトークセッション、女性特有の諸問題を学ぶワークショップが行われ、全国から集まった53名が受講しました。

取材・構成/児玉育美(JAAF メディアチーム)


跳躍種目の実技講習 

 午前中に行われた実技講習は、やや風はあったものの快晴と暖かな日差しに恵まれ、陸上競技場において実施されました。今回行われたのは、走高跳、棒高跳、走幅跳の跳躍種目。講師として、走高跳で1m95(日本歴代2位)の自己記録を持ち、2000年シドニー五輪ファイナリストのハニカット陽子氏(旧姓:太田)、棒高跳前日本記録保持者(4m35)で2004年アテネ五輪出場の近藤高代氏、走幅跳日本記録保持者(6m86)で2008年北京五輪出場の井村久美子氏(旧姓:池田)が、それぞれの種目を担当。受講者を3グループに分け、45分サイクルでローテーションしていく形での展開となりました。


◎走高跳の指導法
 現在、フリーランスのインストラクターとして小学生のかけっこ指導のほか、U16、U13年代の陸上競技指導に取り組んでいるハニカット氏は、走高跳指導のなかでも、小学生を対象に「はさみ跳び」を指導するにあたっての導入部分から、中学生くらいの年代で取り組んでいくことになる「背面跳び」を指導する際の基礎的なポイントまでを中心に、解説を進めました。主な留意点としては、以下の内容が紹介されました。
・ルールが変更され、今年から競技中の試技の制限時間は、従来の1分から30秒に短縮される(注:棒高跳を除くフィールド種目を対象として、競技開始時、最初の試技時間、および競技者数が4人以上残っている場合の試技時間が変更になった。国際陸連では2017年11月より施行、日本では2018年度より適用される)。
・初心者がはさみ跳びを行う際、左右どちらが踏切足であるか見分ける練習法(最初から決めつけるのではなく、実施しているうちに向いているほうを勧める)。
・踏み切る位置は、事故防止にも配慮して指示する。
・はさみ跳びと背面跳びでは、助走の進入角度が異なる(はさみ跳びのほうが横から入る形。背面跳びでは曲走するために角度はやや浅めとなる)ことを留意する。
・はさみ跳びを行う場合、競技場に設置されているマットでは高すぎる場合がある。子どもが恐怖感を覚えたりケガの原因になったりするので配慮する。
・背面跳びの助走で、「内傾して後傾しろ」と指導する例があるが、これは初心者には困難。実際に行うと失速するので、意識させるなら内傾のみとする。
・ただし、内傾を強調する指導を行うと、腰の位置で身体を折り、上体だけを傾けてしまいがち。200mでコーナーを走るイメージを持たせる。
・女子に多い腕振りの特徴と修正の方法。
・背面跳びにおける適切な踏み切り位置、踏切足の着き方。


◎棒高跳の指導法
 棒高跳の講師を務めたのは、2011年に第一線を退いて2012年度から近江高校(滋賀)の教員となり、顧問として陸上競技部の指導にも当たっている近藤氏。経験者が少ないだけでなく、競技そのものに接したことのない人が多い棒高跳の種目特性を踏まえて、今回は、実際にポールに触れて実際の重量を確認するところから、ポールの握り方、ぶら下がってみる感覚を体感する、砂場に向かって助走してポールを突っ込んでみる、というところまでの、いわば棒高跳のさわりの部分を紹介。実際に体験させながら、指導する際の留意点を解説していきました。最後に、棒高跳のピットへ移動し、ボックスやスタンド、アップライトの設定など、棒高跳ならではの設備を紹介しました。
・ポールの特性(中心を持つのと端を持つのとでは重さが全く違う。高価である。傷がつくと競技中に折れる恐れがあるので取り扱いに注意する)。
・ポールの正しい持ち方。握りの位置の説明。
・芝地の上で、ポールを握ってぶら下がってみる→数歩の助走をつけてぶら下がってみる→握りの位置をやや高くして軽く踏み切ってみる→数歩走って踏み切り、空中で身体を反転させてみる、と徐々に難度を上げていく。握りの位置に配慮し、この段階で恐怖心を持たせないようにする。
・砂場での突っ込み動作。助走を2歩、4歩、6歩と徐々に増やして砂場にポールを突っ込んでいくなかで、踏み切りの感覚をつかんでいく。最初は「棒幅跳び」のイメージ。砂場で行ったほうが危なくない。このとき踏み切りは、ポールを握っている位置の真下で行うことを意識させる。できれば踏み切ったあとに身体を反転させていくところまでできるようにしていく。
・さらに難易度を上げていく場合は、砂場を深めに掘って、そこをボックス代わりとして、8~10歩の助走をつけて突っ込み、ポールを曲がる感覚をつかんでみる。スピードがつくため必然的にグリップ位置が高くなり、踏み切り位置も遠くなっていく。柔らかいポールを用いると曲がる感覚がつかみやすい。また、着地位置に走高跳のマットを置いてやると、より安全に行える。
・棒高跳マット、ボックス、アップライトに関する説明。
・質疑応答:「抜き」の感覚のつかませ方、初心者の取り組ませ方、ポール保持と踏切足について、より効果的な腹筋・背筋強化の具体例の紹介等。


◎走幅跳の指導法
 結婚を機に移り住んだ三重県鈴鹿市で、「イムラアスリートアカデミー」を立ち上げ、現在、幼児から小・中・高校生、学生、社会人、パラアスリートの指導に当たっている井村氏は、自身の競技経験も踏まえつつ、女性指導者だからこそできる選手への配慮や声のかけ方、最近の女子選手にみられる傾向や指導時の留意点等を盛り込みながら、初心者に指導する際のポイントを、助走、踏み切り、空中動作、着地の局面ごとに解説を進めていきました。
<技術について>
・フォームやポイントについて尋ねると、「強い選手がやっているから」と答える選手が多い。確かに真似で上達はするが、技術が崩れたときに自分で立て直せないリスクもはらんでいる。自分の技術や練習を「なぜ」「なんのために」行っているかを常に意識しながら取り組ませたい。また、トレーニングが技術練習や短助走跳躍に偏っているケースがみられる。試合だけで全助走跳躍をするとうまくいかず自信を失うことも。
・走幅跳で一番大事なのは踏み切り前。速く走りながら踏み切っていくことが跳ぶための条件となる。女子の場合、腕振りが小さい、膝は上がるのに足が前に出ていないことが多い。練習では、①ラダーを置いてのもも上げ歩行→②①を跳び上がって空中で支持足を変えて進む→③ミニハードルを使ったもも上げ走、を段階的に行っていく。①~③を通じて正しい姿勢、腕振り、膝下の動きを常に注意。①ではゆっくりと大きく行うことを、②ではタイミングを、③では速い動きのなかで正しく大きくタイミングよく行えるようにしていくことを意識させる。ポイントを一度に言うと混乱するので、分解して意識させたり、映像を撮って確認したりしながら行う。
・助走のスタートでは、最初の5~6歩は前傾気味に。踏み切り前で減速していないことが判断の基準となる。
・なぜ「ファウル病」は起きるのかの解説。
・助走から踏み切りへの局面では腕振りへの意識が重要。
・空中での姿勢、着地動作のポイント。
・かがみ跳び、はさみ跳び(シザース)、反り跳びの説明と注意点。
<指導時の留意点>
・女子の場合は、「常に見ていてほしいタイプ」「必要なときだけ声をかけてくれたら、あとは自分でできるタイプ」に分かれる。特に、前者のタイプの場合は、よく観察して、うまくコミュニケーションをとる。
・「失敗してもいい」と声をかけると安心する。また、思ったことはなるべく言葉にして、できているところを褒めつつ、さらによくなるためのポイントを伝えとよい。
・映像を撮って動きをチェックするときは、確認するポイントを絞ってやるとよい。また、時間がかかっても、自分で考えさせて修正していけるよう促す。
・最近は、言葉を発して自分の気持ちを伝えるのが苦手な子どもが多い。当たり前のことでもいいので気にかけてやることが大事。「強くする」の前に、寄り添って、その子自身の成長を見届けられる指導者を目指してほしい。

>>【委員会レポート】女性指導者のためのコーチングクリニック(普及育成委員会)Vol.2
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