2018.02.07(水)選手

【ダイヤモンドアスリート】第3回リーダーシッププログラムレポートVol.1

1月12日、ダイヤモンドアスリートを対象にした「リーダーシッププログラム」の第3回が、前日の第2回に続き、味の素ナショナルトレーニングセンターで行われました。

 このプログラムは、東京マラソン財団スポーツレガシー事業として、同事業運営委員の為末大さん(男子400mH日本記録保持者、2001年・2005年世界選手権銅メダリスト)が監修していますが、第3回で用意されたのは、「勝てるアスリートの数学的思考」をテーマとした深沢真太郎さん(BMコンサルティング株式会社代表取締役/多摩大学非常勤講師)による講義と、杉山文野さん(株式会社ニューキャンバス代表)による講義「LGBTとスポーツの未来」の2つ。2017-2018ダイヤモンドアスリートの橋岡優輝選手(日本大)、江島雅紀選手(日本大)、池川博史選手(筑波大)、長麻尋選手(和歌山北高)、宮本大輔選手(洛南高)、塚本ジャスティン惇平選手(城西大城西高)、井本佳伸選手(洛南高)、中村健太郎選手(清風南海高)、藤井菜々子選手(北九州市立高)、ダイヤモンドアスリート修了生の岩本武選手(順天堂大)、平松祐司選手(筑波大)、佐久間滉大選手(法政大)、山下潤選手(筑波大)に加えて、アスリート委員会から澤野大地選手(富士通;棒高跳)、山本篤選手(スズキ浜松AC;パラ陸上走幅跳)、横田真人さん(男子800m前日本記録保持者)が参加しました。

◎ワークショップ:勝てるアスリートの数学的思考

 
 講義にあたって、進行役を務めた坂井伸一郎さん(株式会社ホープス代表取締役)が登壇し、「今回のリーダーシッププログラムでは、“前人未到”ということも1つのテーマとしているが、深沢さんもこの分野における第一人者。数字を難しいものだと考えすぎないで、“こう考えて、こう使ったら、自分たちの生活や目標が変わってくるのではないか”ということを提唱している。今回は、アスリートの皆さんに役立つという観点で講義していただく。話のなかでは、想像のつかないものを推測し、把握・理解する“フェルミ推定”について紹介されると思う。これは前人未到のところに足を踏み入れている皆さんには、絶対に役立つ考え方。ぜひ、理解を深めてほしい」と、深沢さんを紹介しました。

 深沢さんは、「ビジネス数学」の提唱者。数学は、学校教育の場面では複雑な公式を覚えたりそれを用いて計算したりすることに注視されがちですが、本来は「数学を学ぶことで、論理的思考能力を高めていける」という効果も持っています。深沢さんは、この側面を社会人の教育場面に生かし、数字や数学的な考え方を用いる独自の手法で、物事を論理的(ロジカル)に捉えられるビジネスパーソンの育成や指導にあたっています。
 ビジネス場面で大きな強みとなる「論理的に考える力」は、アスリートが物事を考える際にも活用できるとして、この講義では、「数字や数学的な考え方を用いて、物事を論理的に捉えたり整理したりする」方法が段階的に紹介され、選手たちは、その都度、挙がった例題に取り組みながら、考え方を学んでいきました。

・ステップ1:物事や課題を「式」で表現する(構造化する)
→テレビドラマ「陸王」がヒットした要因は、例えば、「(原作の面白さ)×(脚本のアレンジ)×(俳優の演技力)+(放送枠)」というように「式」で表現することができる。このように、物事や課題を考えていくときには、構成する要素を割り出し、それらを「式」で表していくと、各要素を整理して構造を把握することができる。

・ステップ2:物事を、「構造化」「仮説立て」して、大まかな結論を導き出す(フェルミ推定)
→あるカフェの1日の売上高がいくらかを推測するとき、要素となるもの(メニュー、単価、営業時間、時間帯に応じた来客数、座席数、1人あたりの購入額など)を考え、それらに「◎◎円、◎◎人、◎◎時間」と数値を仮定すると、概算することが可能となる。要素を考えていくのが「構造化」、“仮に◎◎”としていく行動を「仮説立て」という。構造化と仮説立てによって大まかな結論を導き出していく思考プロセスを「フェルミ推定」という。漠然とした出来事でも、このように構造化と仮説立てを行えば、予測を立てることが可能となる。

・ステップ3:実際に、フェルミ推定を用いて考えてみる(総合演習)
→いくつかのグループに分かれて、“テレビドラマ「陸王」の影響でフルマラソンに初めて挑戦する人は、国内に何人いるか?”という設問に挑戦。自分たちなりに「構造化」「仮説立て」し、人数の概算を出す。

・ステップ4:講義で学んだ考え方を使って、自分のことを考えてみる(応用・活用)
→以下の4つの設問に沿って、自分自身のトレーニングを、構造化、仮説立てしていくことに挑戦する。

Q1:(構造化)あなたがこれからするべきトレーニングは、どういう式で表現できる?
Q2:(仮説立て)その式のなかで、最も重要だと思っている要素はどれ?
Q3:(実行する)Q2で答えた要素の質を高めるために、具体的に何をする?
Q4:(仮説立て)もし、それで成果が思わしくなかったら、何をどう変える?

<振り返り>
 講義のあとには、ダイヤモンドアスリートを3グループに分け、そこに修了者やアスリート委員が加わる形で行う「振り返りの時間」が、少し長めに設けられました。グループごとでの振り返りに際して、坂井さんは、「感じたことはいろいろあったと思うが、ここでは糧になったこと、持ち帰って活用しようと思ったことなどを、“競技者の立場”で話し合ってほしい」と提示。ダイヤモンドアスリートには「振り返りの当事者」の立場で、修了生には「ダイヤモンドアスリートたちの学びを最大化するために、考えを引き出したり、整理できるよう促したりする」立場で、アスリート委員には「修了生の側から見守り、必要であればサポートする」立場で議論することを求めました。途中で、修了生からの質問に答えるだけになりがちだったダイヤモンドアスリートに対して、「互いに関わり合いながら意見交換していこう」と促す場面も。自分たちから修了生やアスリート委員に質問するなどして考えをまとめていく努力をすることを要望していました。
 その後、各グループから1人が代表として立ち、意見交換した内容や自分が得た“学び”を発表。
 池川選手、井本選手、藤井選手の3人に、山下選手、澤野選手がサポートに入った1つめのグループは、池川選手が発表し、「僕らのチームでは“競技力を高めるために、これからすべきトレーニング”を構造化したときに書き出した要素について、全員が大きな要素ばかりを構造化していて、細かいところが書けていなかったという話になった。そういう(細かいところも構造化して考えることが必要)点は陸上の世界でもビジネスの世界でも同じだなと思った。また、計画したトレーニング中にケガするといったように、構造化したものを実践していくなかで弊害も出てくると思う。そうしたとき、計画はあくまで計画として、起きた事態に応じて対処できる柔軟性が大事だなと感じた」と話しました。

江島選手、宮本選手、中村選手のチームは、岩本選手と山本選手がサポートして議論。発表した江島選手は、「僕らは、毎日の生活や人との関わりがあって競技ができているという観点から、競技だけでなく、環境的要因の構造化も必要ではないかということを考えた」と切り出し、「意見が多く出たのは、人との関わり方。今は指導者がいても、いつか一人でやることになることになるかもしれない。自分が知らない世界が訪れたときに競技ができなくなったりしないよう、あらかじめ予測して構造化しておくことが必要なのではないか。また、構造化するときには、最終目的に対して、1つだけでなくいくつかを予測して構造化したり、「×」や「+」だけでなくて「-」も使って考えたりするとよいのではないかと思った」と述べました。

最後に発表したのは、佐久間選手、平松選手がサポートに入った橋岡選手、塚本選手、長選手のチーム。代表して登壇した塚本選手は、「僕たちのグループでは、そもそも“学びを最大化する”とはどういうことかを考えた」と言い、「今回の講義でいうと、物事を考えるとき、それを式にして考えるといったように、いろいろなやり方があるということがわかった。そうしたことを踏まえて、“どうしたら最大化につながるか”を考えることが大事であるという点に気づくことができた」と話しました。



取材・構成:児玉育美/JAAFメディアチーム

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