2018.03.29(木)その他

記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話” 第6回「「9秒台」の時の「風速」」



◆「9秒台」の時の「風速」


「表11」は、9秒台をマークした125選手の「初9秒台」と「自己ベスト」を出した時の風速別の分布(およびその累計人数)を調べたものだ。

【表11/「初9秒台」と「自己ベスト」の時の風速】
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「追風1.5m以上」は「初9秒台」の時が、45人(36.0%)、「自己ベスト」の時が、41人(32.8%)。「追風1.1m以上」では「初9秒台」の時が72人(57.6%)、「自己ベスト」の時で64人(51.2%)といずれも過半数を超える。「追風0.5m以上」では「初9秒台」が100人(80.0%)、「自己ベスト」の時が95人(76.0%)を占める。

「向風」での「初9秒台」は9人(7.2%)、「自己ベスト」は11人(8.8%)。最も不利な条件での初9秒台は「-1.1m」、自己ベストでは「-0.8m」だった。桐生選手の9秒98の時は「+1.8m」で、「いい風」に恵まれたといえる。

なお、風速がタイムに及ぼす影響は、研究手法によってその数値に違いはあるが、「表12」の通りである。

【表12/風速がタイムに及ぼす影響】
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・180㎝・75㎏の選手が、平地、無風、気温26度、湿度50%、気圧1013hPaの条件下に「10秒00」で走った場合を基準として計算。
・「研究A」は、J・ムレイカ氏の手法による。
・「研究B」は、P・N・ハイデンストローム氏と筆者の手法による。風速3.0m以上から1000分の1秒単位での差が出てくるが、ここでは筆者の数字を掲載した。
・「研究C」は、ワード・スミス氏の手法による。

また、標高が高くなると空気密度が低くなり抵抗が軽減されるためそれだけタイムも良くなる。「表13」は、それをまとめたものだ。

【表13/標高がタイムに及ぼす影響】
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・平地、無風、気温26度、湿度50%、気圧1013hPaで「10秒00」で走った場合を基準として計算。
・「A」は、J・ムレイカ氏の手法による。
・「B」は、筆者の手法による。



「風速の影響」「標高の影響」ともに筆者のデータよりもムレイカ氏の示した数値の方が小さい。筆者やハイデンストローム氏の手法が20世紀に導いたものであるのに対し、ムレイカ氏のそれは過去の研究などを加味して2006年に導いた最新の手法によるもの。よって、ムレイカ氏の数字の方がより正確なものであろうと考えられる。とはいえ、あくまでも机上での計算であることをお断りしておく。

★<第7回>
・桐生選手に続く日本人選手の「9秒台」の可能性
に続く...


※記録情報は2017年12月31日判明分
文:野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

写真提供:フォート・キシモト
記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話”
▼第1回「世界記録と日本記録の進歩は?」 
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11324/
▼第2回「桐生選手のトップスピードは時速42.0㎞」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11327/
▼第3回「桐生選手のピッチ、ストライドの年別の変化/日本歴代上位選手とのピッチ・ストライドの比較」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11337/
▼第4回「「初9秒台」の以前とその後」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11338/
▼第5回「世界の9秒台選手の特徴」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11367/
▼第6回「「9秒台」の時の「風速」」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11366/
▼第7回「桐生選手に続く日本人選手の「9秒台」の可能性」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11368/
▼第8回「五輪&世界選手権の「ファイナリスト」への条件」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11369/

▼2018年4月~「日本グランプリシリーズ」が始まります!
http://www.jaaf.or.jp/gp-series/

▼5月20日(日)「セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪」開催!
http://goldengrandprix-japan.com

▼6月24日(金)~26日(日)「第102回日本陸上競技選手権大会」開催!
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