2018.03.28(水)その他

記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話” 第5回「世界の9秒台選手の特徴」



◆世界の9秒台選手の特徴

「9秒台」で走った125選手の各種の「平均値と標準偏差」は「表7」の通り。
なお、「BMI」は、「Body Mass Index(ボディー・マス・インデックス)」の略で、

[体重(kg)]÷[身長(m)の二乗]

で算出される国際的に用いられている体格指数である。
ただ、身長・体重は年や資料によって違いがあるが、ここでは自己ベストを出した時の国際陸上競技統計者協会(ATFS)のデータを基本とした。

【表7/9秒台選手の各種の平均値】
 平均値標準偏差最小値~最大値
ベスト記録9.9220.079.58~9.99
ベスト記録時の年齢24.823.1819.96~40.15
ベスト記録時の身長179.66.1168~196
ベスト記録時の体重75.46.760~98
ベスト記録時のBMI23.351.5419.5~27.0
初9秒台記録9.9620.0319.76~9.99
初9秒台の年齢23.752.5418.93~30.60
個人10位記録10.0790.1159.79~10.59
個人10傑平均10.020.099.723~10.309




「初9秒台」を最も若くしてマークしたのは、18歳11カ月12日(6913日)のトレイボン・ブロメル(アメリカ)で9秒97(自己ベストは9秒84=2015年)。最年長は30歳2カ月3日(11178日)にして9秒93で走ったパトリック・ジョンソン(オーストラリア。自己ベストも同じ)だ。

現時点での自己ベストを出した時の年齢が最も若いのは、初9秒台と同じくブロメルで19歳11カ月15日。初9秒台の9秒97からほぼ1年で9秒84に縮めた。

最年長での自己新は、キム・コリンズ(セントキッツ・ネビス)の40歳1カ月24日(14664日)だ。初9秒台(9秒98)を出したのが2002年7月27日で、26歳3カ月22日の時。それから10年7カ月7日ぶりに37歳2カ月29日で9秒97の自己新を出し、その翌年は9秒96に、そして「不惑」にして9秒93まで記録を伸ばした。

9秒台で走った125人の身長と体重の平均値は「表7」の通り、「179.6cm(±6.1)」と「75.4kg(±6.7)」。「BMI」の平均は、「23.35(±1.54)」となる。

身長が最も高いのはウサイン・ボルト(ジャマイカ/9秒58=2009年)の196cm(88kg)、最も低いのはコビー・ミラー(アメリカ/9秒98=2000年)とビージェイ・リー(アメリカ/9秒99=2017年)の168cmで日本の高校3年生の平均170.7㎝(2016年度)よりも低い。体重は68kgと72kgで高校生の平均(62.5kg)よりもがっちりしている。



体重が最も重いのは、ライアン・ベイリー(アメリカ/9秒88=2010年)の98kg(193㎝)。最軽量は、シルビオ・レオナルド(キューバ/9秒98=1977年)の60kg(173cm)だ。

「BMI」が最も大きいのは、「26.99」のオルソジ・ファスバ(ナイジェリア/9秒85=2006年)で170cm・78kg。最も小さいのが「19.53」のジャイスマ・サイディー・ドゥレ(ノルウェー/9秒99=2011年)で192cm・72kgである。

桐生選手が9秒98で走った時は、21.74歳、身長176㎝・体重70㎏、BMI22.6。

年齢は125人の平均値(23.75歳±2.54)よりも2歳あまり若く、若い方から28番目だったが、標準偏差の範囲内。また176㎝・76㎏の体格(BMI22.6)は平均値(179.6㎝・75.4kg。23.38)よりもひと回り小柄だが、こちらも標準偏差の範囲内。

「初9秒台」を出した125人の平均年齢は23.75歳だが、その1歳ごとの分布とタイムの範囲および平均(±標準偏差)は、「表8」のようになる。

【表8/初9秒台の年齢分布】
年齢人数記録の範囲平均と標準偏差
18歳1人9.97 
19歳1人9.97 
20歳10人9.95~9.999.972±0.014
21歳24人9.76~9.999.957±0.045
22歳26人9.87~9.999.957±0.027
23歳15人9.88~9.999.959±0.032
24歳13人9.93~9.999.968±0.019
25歳13人9.91~9.999.956±0.025
26歳3人9.98~9.999.983±0.005
27歳8人9.92~9.999.971±0.022
28歳7人9.90~9.999.970±0.030
29歳1人9.99 
30歳3人9.89~9.99 

以上の通りで、21~22歳で全体の40.0%を占めている。

125人の「初9秒台」のタイムの分布は「表9」の通り。

その平均と標準偏差は「9秒962(±0.031)」だ。1000分の1秒の単位を切り上げて100分の1秒単位にすると「9秒97」である。

「初9秒台」が、「9秒94以内」は125人中の28人(22.4%)。残る97人(77.6%)は、9秒9台後半の「9秒95~99」。さらに「9秒97~99」が半数以上の69人となる。なお、「初9秒台」からその後にタイムを伸ばした「ベスト更新者」の人数とその記録の範囲も示した。

【表9/初9秒台の記録分布とその後の記録更新者数と記録の範囲】
初9秒台記録人数(累計)ベスト更新者

→PBの範囲
(平均±標準偏差)

9秒761人(1人)1人(100.0%)→9.58
9秒871人(2人)なし 
9秒881人(3人)1人(100.0%)→9.69
9秒891人(4人)なし 
9秒901人(5人)1人(100.0%)→9.80
9秒911人(6人)なし 
9秒922人(8人)なし 
9秒9313人(21人)6人(46.2%)→9.82~9.91
(9.863±0.027)
9秒947人(28人)4人(57.1%)→9.85~9.93
(9.885±0.036)
9秒9512人(40人)5人(41.7%)→9.82~9.93
(9.872±0.035)
9秒9616人(56人)6人(37.5%)→9.69~9.94
(9.855±0.088)
9秒9719人(75人)14人(73.7%)→9.74~9.96
(9.892±0.059)
9秒9817人(92人)7人(41.2%)→9.78~9.95
(9.899±0.055)
9秒9933人(125人)17人(51.5%)→9.72~9.98
(9.915±0.061)

125人のうち62人が「初9秒台」のあとに自己ベストを更新している。ということは、残る63人は「初9秒台が自己ベストのまま」ということになる。といっても、この63人には桐生選手のようにまだまだ「現役」という選手も多く、来シーズンの2018年8月末時点の年齢で25歳以下の選手が63人中11人(17.5%)、29歳以下なら28人(44.4%)になる。

125人の2017年シーズン終了時点での「自己ベスト」の平均タイムは、「表7」に示した通り「9秒922(±0.070)」で平均年齢は「24.82歳(±3.18)」。「初9秒台」の平均が「9秒962(±0.031)」で「23.75歳(±2.54)」だから、平均的には約1年後に「0秒04短縮」したことになる。

しかし、この中には、「初9秒台=自己ベストのまま」という63人も含まれている。そこで、「初9秒台」以降に記録を更新した62人に加え、すでに「現役を引退している」、あるいは「初9秒台」が自己ベストのままの63人のうち2018年8月末時点で30歳を超え「今後の自己ベストの更新は厳しそう」と考えられる35人を加えた計97人について計算してみた。

すると、「初9秒台」は「23.94歳(±2.67)」で「9秒962(±0.034)」。それから約1年5カ月後の「25.32歳(±3.31)」の時に「9秒910(±0.075)」を出して「0秒052(±0.062)」縮めた計算になる。

なお、「30歳を超えてベストの更新は厳しそう」と書いたが、現実には26歳で初めて9秒台をマークしてから14年後の「40歳」になってもベストを更新したキム・コリンズ(セントキッツ・ネビス)のような選手もいるのではあるけれども……。

「初9秒台」からタイムを更新した62人のみに限れば、「初9秒台」が「23.18歳(±2.31)」の時で「9秒962(±0.035)」。そして約2年2か月後の「25.34歳(±3.59)」に初9秒台を「0秒082(±0.060)」上回る「9秒881(±0.076)」をマークしたことになる。

「表10」には、「初9秒台」のタイムを更新した62人について年齢別の分布をまとめた。

【表10/「初9秒台」から記録を伸ばした62人の年齢分布とその後】
初9秒台をマークした時自己ベストをマークした時
年齢人数記録の範囲自己ベスト
(平均)
自己ベストの年齢
(平均)
18歳1人9.979.8419.96歳
19歳1人9.989.9220.70歳
20歳7人9.95~9.999.69~9.98
(9.883±0.091)
20.72~24.22歳
(22.01±0.86)
21歳14人9.76~9.999.58~9.97
(9.844±0.096)
21.38~33.26歳
(24.26±3.41)
22歳10人9.93~9.999.78~9.95
(9.874±0.059)
22.37~29.04歳
(24.85±1.90)
23歳10人9.88~9.999.69~9.98
(9.901±0.081)
23.59~28.75歳
(25.17±1.79)
24歳8人9.94~9.999.85~9.96
(9.913±0.036)
24.25~28.09歳
(25.81±1.17)
25歳4人9.94~9.999.88~9.92
(9.905±0.015)
25.51~28.76歳
(27.41±1.39)
26歳1人9.989.9340.15歳
27歳2人9.98&9.999.84&9.95
(9.895±0.055)
27.89&28.61歳
(28.25±0.36)
28歳3人9.90~9.979.80~9.87
(9.837±0.029)
28.51~33.37歳
(31.33±2.06)
29歳1人9.999.9629.76歳

★<第6回>
・「9秒台」の時の「風速」
に続く...


※記録情報は2017年12月31日判明分
文:野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)

写真提供:フォート・キシモト

記録と数字からみた「9秒98」や「9秒台」についての“超マニアックなお話”
▼第1回「世界記録と日本記録の進歩は?」 
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11324/
▼第2回「桐生選手のトップスピードは時速42.0㎞」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11327/
▼第3回「桐生選手のピッチ、ストライドの年別の変化/日本歴代上位選手とのピッチ・ストライドの比較」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11337/
▼第4回「「初9秒台」の以前とその後」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11338/
▼第5回「世界の9秒台選手の特徴」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11367/
▼第6回「「9秒台」の時の「風速」」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11366/
▼第7回「桐生選手に続く日本人選手の「9秒台」の可能性」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11368/
▼第8回「五輪&世界選手権の「ファイナリスト」への条件」
http://www.jaaf.or.jp/news/article/11369/

▼2018年4月~「日本グランプリシリーズ」が始まります!
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▼5月20日(日)「セイコーゴールデングランプリ陸上2018大阪」開催!
http://goldengrandprix-japan.com

▼6月24日(金)~26日(日)「第102回日本陸上競技選手権大会」開催!
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