2018.11.27(火)その他

【Challenge to TOKYO 2020 日本陸連強化委員会~東京五輪ゴールド・プラン~】第2回 男子リレーの強化戦略(1)

日本陸連強化委員会の強化方針を、担当者たちによる座談会形式で説明してもらう本企画。その第2回は、「男子リレーの強化戦略」をテーマにお届けする。

強化カテゴリーの最上位「ゴールドメダルターゲット」に位置する4×100mリレー、かつて2度の五輪入賞を誇る4×400mリレー、新種目となる男女混合4×400mリレーについて、東京五輪に向けた残り2年でどのような強化を図るのか――。そのプラン、プロセスについて語ってもらった。

●構成/月刊陸上競技編集部
●撮影/船越陽一郎

※「月刊陸上競技」にて毎月掲載されています。
※この座談会の後、2019年のドーハ世界選手権ではワールドランキング制を取り入れないことを国際陸連が発表しました。
https://www.iaaf.org/news/press-release/revised-qualification-system-for-iaaf-world-a



(左から)
髙平慎士:アスリート委員会
麻場一徳:強化委員会 強化委員長
土江寛裕:強化委員会 100m/200m/4×100mR オリンピック強化コーチ
山崎一彦:強化委員会 トラック&フィールド ディレクター


世界リレー日本開催の意義

――今回は「男子リレー」がテーマとなります。10月12日に、来年5月11日~ 12日に世界リレーが横浜市の日産スタジアムで開催されると発表されました。この点について、まずは麻場強化委員長からひと言お願いします。

麻場 前回に、来年のアジア選手権から世界リレー、ドーハ世界選手権、そして2020年の東京五輪へと、一連の流れで入っていくことが大事だとお伝えしました。そのなかで、世界リレーの日本開催が決まったということは、日本のリレーチームにとって高いレベルで準備ができるというメリットが挙げられます。これまでの世界リレーの位置付けは、「最大限の結果を残す」こと。ですが、やはりシーズンイン直後という時期的な問題や、過去3大会はいずれもバハマでの開催ということで遠征の負担など、さまざまなことに配慮をしながら臨まなければいけませんでした。しかし、今回は日本で開催していただけるということで、きちんとしたプランニングのもとに、プロセスを明確にして東京までの道筋を作れるのではないでしょうか。そういう意味で、世界リレーは意義があるものになるのではないかと思っています。

それから、日本の皆さんにリレーのおもしろさ、日本のリレーのレベルの高さを目の前で見ていただけます。それによって、東京五輪への興味・関心を引き寄せ、応援していただける、そんな態勢が作れるのではないでしょうか。これも前回言いましたが、今のスポーツ界は、世間の皆さんからどれだけ共感を持っていただけるか、応援していただけるかが結果にものすごく影響する。そういう意味で、この世界リレーを一つのきっかけにして、今まで以上に日本のリレーのことを応援していただけるような、そういう流れができる、空気ができるといいなと思っています。


――土江コーチは男子リレーの強化の立場から、この大会をどう捉えていますか?

土江 まず一番大きいと感じているのは、今、麻場委員長が後半部分でおっしゃった、皆さんに見ていただく機会ということ。これまで、4×100mリレー(以下、4継)は世界のファイナルを何回も走ってきました。ずっと(歴史を)つないできていて、北京五輪で銅メダル(上位国のドーピング違反によって銀メダルに繰り上がる予定)を取って、リオ五輪では銀を取りました。日本はリレーが強いということはかなり浸透していて、同時に、男子スプリンターたちは注目されてきています。でも、国内で日本が世界と戦うところを日本の皆さんに見せる機会は、なかなかなかった。東京五輪を前に、世界リレーで本気の世界と戦う姿を、日本の皆さんに直に観ていただけることは、日本のリレーが〝国民的な種目〟として定着するために非常に大きなチャンスだなと感じています。

強化の視点では、今回の世界リレーがドーハにつながって、ドーハの結果が東京につながる、言ってしまえば「東京が始まる」ということです。4継にしても4×400mリレー(以下、マイル)にしても、今回で2020年へのモーメントをしっかり作り、勢いづけていければと思っています。


――日本陸連アスリート委員会として、また現役に近い立場として高平さんはこの大会をどのように捉えていますか?

高平 五輪に向けて予行練習的に大きな大会が行われるという意味では、すごくメリットがあることだと思います。一方で、私は2007年の大阪世界選手権を経験しているので、相当なプレッシャーがかかることが想像できます。もちろん、それも予行練習の1つ。プレッシャーや期待感がどこまで高まるのか、高まった時にどう対応できるのか。それらを実際に経験する良い機会になるのではないかなとは感じています。ただ、今の男子4継に関しては、そういったことがまったく問題にならないくらいのレベルにいますし、そんななかでもスタジアムを満員にしてやってやるぞ、という雰囲気なのかもしれません。

私自身は、やはりこういう試合が来たからにはスタジアムを満員にして、それがファンを増やし、陸上競技の盛り上がりにつながるようにしていきたいと思っています。


―― 世界リレーは男女とも4継、マイル以外にも前回は混合マイル、4×200m、4×800mが行われていました。まだ種目は正式に発表されていませんが、自国開催として全種目への出場を考えているのでしょうか。

山崎 具体的には今後に決定することになりますが、優先順位としてはやはり男子4継とマイルになると思いますし、女子4継とマイル、男女混合マイルも重要になるでしょう。

今までは戦略的に結構難しい大会ではありましたが、選手の負担を少し軽減できます。また、東京五輪に向けて、もう少し戦略の厚みができます。4継については「金メダル」が目標ですので、それに向けてさじ加減を調節できますし、マイルについては「入賞」という目標があるので、そちらのほうにも優位に働くのかなと思います。


――4月後半のアジア選手権から約3週間で世界リレーという日程です。当初はアジア選手権重視だったかと思いますが、世界リレーが自国開催になったことで強化スケジュールに修正は入るのでしょうか?

山崎 土江コーチを中心にコーチミーティングで、ドーハ世界選手権までを含めた戦略を練っています。1つひとつ、ただがんばればいいというものでもないですし、選手個人を尊重して緩急を考える必要があります。一方で、リレー種目の世界選手権や東京五輪の出場権や、その場で優位に立つための戦術についても、世界リレーが入ったことでプランにかなり厚みが出るかなと思っています。


――代表選手の選考については?

土江 エントリー等の詳細がまだはっきりしていない部分があるのですが、来年のシーズンインを少し見られると思うので、アジア選手権と国内シーズンのギリギリのところまで見て決めていくようにしたいと考えています。選考要項についてはこれから準備をしていきます(※注/ 12月の理事会で提案され、承認されれば発表の見通し)。


――世界リレーに全力を注ぎ込むというスタンスになるのでしょうか。

土江 特にマイルですね。4継は、ずっと時間をかけた戦略をもってやっていて、5月のGGP大阪もその戦略の1つ。そこでしっかり記録を出して、ドーハ世界選手権の出場権はバハマに行かなくても決めてしまいたいという思惑がありました(※注/当時はバハマ開催と見込まれていた)。37秒台を狙っていったら、そのとおりに出た(37秒85=パフォーマンス日本歴代3位)し、2チーム目も38秒64で走りました。7月22日のダイヤモンドリーグ(DL)・ロンドン大会でも38秒29。それだけの記録を出しているので、世界リレーで何かがあっても、おそらく世界選手権の出場権を逃すことはないと考えています。

であるならば、注力する方向としてはマイル。伝統的に、マイルは世界と戦える種目。山崎ディレクターが東京五輪の目標を入賞とおっしゃいましたが、2004年のアテネ五輪では4位まできた種目です。僕はメダルを考えられるチームにできると思っています。

私は両種目を統括するかたちではあるのですが、マイルは山村貴彦コーチ(東京・城西高教)を中心に強化を進めていきたいと思っています。マイルできちんとドーハ世界選手権、さらに東京五輪の出場権を取るために、まずはアジア選手権、世界リレーでしっかりと記録を出していくことが必要。その2レースで22年も破られていない日本記録(3分00秒76)を塗り替えないといけません。1996年のアトランタ五輪で5位に入賞した時の記録で、当時の世界レベル。偉大な記録ですが、それがいまだに破れてないというのは、単独種目の400mも含めてマイルに関わる種目がちょっと停滞しているということです。100mも、4継をきっかけに上がっていきました。マイルを中心に、400mも上げていきたいと思っています。世界リレーの自国開催の一番のメリットは、やっぱり男子のマイルにあると思っています。


――高平さんが先ほどおっしゃったように、注目を集められる大会になってほしいです。

高平 大阪世界選手権でも、多くの方々が足を運んでくれて応援していただいたことは、素晴らしい経験でした。陸上競技で、長居のスタンドをあんなに埋められたことは、ほとんど経験がなかったことでもありましたから。でも、今の素晴らしいメンバーをもってすれば、もう1度スタンドを埋めることは絶対に叶うはずです。もちろん、戦略の中身も大事ですけど、東京五輪に向けて陸上競技を盛り上げるためにも、ファンを拡大するためにも、4継は一番わかりやすい種目でもあると思うんですね。

そのなかで、こうやって戦略を立ててやらないといけない、ということをリレーで見せてくれると、選手もそうですし、国民の皆さんにも伝わりやすいのではないでしょうか。この世界リレーでしっかり順位を取っていかないと次の段階に進めない、ということをみんなで足並みをそろえてやらないといけない。日本代表の価値、チームジャパンの戦略が見やすくなるような大会になってほしいと思っています。

山崎 今、高平さんがおっしゃったことは、すごく大事。プロセスを見てもらうというスタンスですね。そういう意味で、ますますリレーの魅力を伝えられて、応援してくれる人が増えてくれるのではないかなと思っています。


第2回 男子リレーの強化戦略(2)」に続く…

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