2018.12.06(木)大会

【福岡国際マラソン】レポート&コメント:服部勇馬選手、日本人14年ぶりの優勝!MGCファイナリスト3名決定!



2020年東京オリンピック代表選考に向けた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)シリーズ2018-2019」第2戦となる第72回福岡国際マラソンが、第102回日本選手権男子マラソンと、2019年9月に開催されるドーハ世界選手権日本代表選考会を兼ねて、12月2日に、福岡県福岡市の平和台陸上競技場をスタート・ゴールとする42.195kmのコースで行われました。

レースは、序盤から先頭グループに位置した服部勇馬選手(トヨタ自動車)が、32km付近でイエマネ・ツェガエ選手(エチオピア)、アマヌエル・メセル選手(エリトリア)とともに抜け出すと、36kmすぎで両選手を突き放し、日本歴代8位となる2時間07分27秒の好記録でフィニッシュ。日本人選手としては、2004年に尾方剛選手(当時、中国電力)が制して以来14年ぶりとなる優勝を果たすとともに、2019年9月15日に開催されるMGCへの出場を決めました。


このほか、6位(2時間10分42秒)、7位(2時間10分54秒)でフィニッシュした山岸宏貴選手(GMOアスリーツ)と福田穣選手(西鉄)も、必要な条件を満たしてMGC出場権を獲得。これにより、新たに3選手がMGCファイナリストに加わりました。


 
海外招待として、2015年世界選手権金メダリストのギルメイ・ゲブレスラシエ選手(エリトリア)、2015年世界選手権銀メダリストで2時間04分48秒の自己記録を持つ前々回覇者のイエマネ・ツェガエ選手(エチオピア)、2011年銀メダリストのビンセント・キプルト選手(ケニア)など有力選手が出場。また、日本選手も、2月の東京マラソンで2時間06分11秒の日本新記録(当時)を樹立した設楽悠太選手(Honda)を筆頭に、4月のボストンマラソンを制した川内優輝選手(埼玉県庁)、ジャカルタ・アジア大会4位の園田隼選手(黒崎播磨)、2012年ロンドン五輪6位、2013年モスクワ世界選手権5位の実績を持つ中本健太郎選手(安川電機)など、すでにMGC出場権を得ている選手のほか、MGCファイナリストの条件となる2時間11分00秒以内で日本人1~3位もしくは2時間10分00秒以内で日本人4~6位の結果が見込める選手、さらにはワイルドカード(上位2レースの平均記録が2時間11分00秒以内)でのMGC出場が狙える選手が多数エントリーしたこの大会。その影響もあって、大会前の段階から、2004年の第58回大会以来となる日本人の優勝、新記録・好記録の誕生、新たなMGCファイナリストの出現など、さまざまな視点から注目を集めていました。

ペースメーカーも6名用意され、前日のテクニカルミーティングで、先頭集団は1km3分00秒前後(5km15分00秒見当)のペース、第2集団は1km3分05秒前後(5km15分25秒)のペースを設定し、最長で30kmまでつくこととなりました。しかし、主催者が発表したレース当日正午のグラウンドコンディションは、天候晴れ、気温20.2℃、湿度47%、東南東の風2.7mと、12月とは思えない暖かさに。日差しのあるところでは、暑さすら感じられるような条件のなか、レースは12時10分にスタートしました。



トップグループは、日本の実業団所属で、前回4位(2時間08分44秒)のビダン・カロキ選手(横浜DeNA/ケニア)を含む3選手がペースメーカーを務めて、最初の5kmをひとかたまりとなって15分04秒で通過、やや縦長になって迎えた10kmは30分08秒(15分04秒=5kmのラップライム、以下同じ)で先頭が通過、ペースメーカーを含めて26人となった15kmは45分12秒(15分04秒)で通過していきます。この間、4km過ぎでキプルト選手が遅れ(12km過ぎで棄権)、11.5km付近で川内選手が後退。さらには15kmを過ぎた辺りで中本選手(25~30kmの区間で棄権)も遅れ始めます。また、17km過ぎでゲブレスラシエ選手がペースダウン(中間点前で棄権)。19km過ぎから20kmまでにリオデジャネイロオリンピック代表の佐々木悟選手、市田宏選手(以上、旭化成)、石田和也選手(西鉄)、宇賀地強選手(コニカミノルタ)らもついていけなくなり、1時間00分16秒(15分03秒)で通過した20kmでは先頭集団はペースメーカーを除き15名。ツェガエ、メセルの海外招待2選手と13名の日本人選手で構成される隊列となりました。

中間点を1時間03分37秒で通過して、22kmを過ぎた辺りで高久龍選手(ヤクルト)が、さらに髙田千春選手(JR東日本)が脱落。23km過ぎで山岸選手も先頭集団からやや離れる形となりました。その後、山岸選手は、後退してきた野口拓也選手(コニカミノルタ)、福田選手、神野大地選手(セルソース)と4人で第2グループをつくってレースを進めていきました。

25kmはペースメーカーを除き9名となった先頭集団が1時間15分19~20秒で通過、第2グループは1時間15分28秒での通過となりました。ここでカロキ選手がレースを終えてペースメーカーは2人になります。また、25.5km辺りから遅れがちだった永井秀篤選手(DeNA)がその後、ついていけなくなり、トップグループは、メセル選手、園田選手、服部選手、窪田忍選手(トヨタ自動車)、橋本峻選手(GMOアスリーツ)、設楽選手、市田孝選手(旭化成)の8名になりました。28km以降は先頭集団のペースが落ちるなか、園田選手とメセル選手、服部選手が前方に位置する形で30kmを1時間30分54~56秒(15分35~37秒)で通過。ここでペースメーカーが外れると、少し牽制が続いたあと、押し出される形で園田選手が先頭に立ち、これに窪田選手が続き、さらにメセル選手と服部選手がつく配置に。一方、市田孝選手は31km過ぎから徐々に遅れる展開となりました。

園田選手は、31.6375km地点にある折返点をトップで通過して32kmにある給水地点に向かいましたが、給水後、ツェガエ選手が引っ張る形でメセル選手と服部選手の3人が前に出ます。園田選手、橋本選手、窪田選手が並走してこれを追い、設楽選手がやや遅れる展開となりました。

1位グループの3選手は32.7km辺りから服部選手が前に出て、海外2選手がぴたりとつく隊列に。最初は海外選手に前に行くよう促すゼスチャーも何度か見せていた服部選手でしたが、33km辺りから主導権を握る走りに切り替えると、34kmまでの1kmを2分54秒にペースアップ。メセル選手、ツェガエ選手を従える形で35kmを1時間46分12秒(15分17秒)で通過しました。大勢を決定づけることになったのは36kmの給水地点。ボトルを両手に前へ出た服部選手に海外選手がつくことができず、500mの間にその差が5秒に開きました。その後も服部選手は仕掛けているようには感じられないほど力みのない走りで、36~37kmは2分54秒、37~38kmを2分53秒でカバーして独走態勢を築きます。35~40kmの5kmは実に14分40秒までに引き上げ、40kmを2時間00分52秒で通過すると、ラスト2.195kmを6分35秒で走りきり、日本歴代8位の2時間07分27秒でフィニッシュ。福岡マラソンでは14年ぶりとなる日本人優勝を果たすとともに、MGCへの出場権も手に入れました。

2位のツェガエ選手、3位のメセル選手に次いで、日本人2位となる4位でフィニッシュしたのは設楽選手。32kmの給水後、いったんは4位集団から遅れますが、再び盛り返し、園田選手との4位争いを制して、2時間10分25秒でゴール。設楽選手に6秒差で続いた園田選手は、日本人3位となる2時間10分31秒・5位でレースを終えました。

設楽・園田選手に続いて6位・7位で平和台陸上競技場に戻ってきたのは山岸選手と福田選手。2人は中盤を過ぎたところで先頭集団から離れましたが、終盤もよく粘り、山岸選手は2時間10分42秒を、福田選手は2時間10分54秒をマークしました。先着した設楽・園田選手がMGCを獲得しているため、MGCファイナリスト選考上では「日本人2位・3位で、2時間11分00秒以内」の条件を満たす形となり、MGCファイナリストの座を手に入れました(MGCファイナリストになった日本人上位3選手のコメントは別記)。

レース後の記者会見で、まず「スタート時に太陽が顔を出したときには絶望感に変わった。しかし、いい意味で期待を裏切ってくれる結果となった」と述べたのは尾縣貢日本陸連専務理事。「海外の素晴らしいランナーが脱落していくなか、日本の選手がうまくレースをつくっていく姿を見て、MGCの効果というものを実感した」と喜ぶとともに、「服部くんが持てる力を出してくれたことに感激した」と称賛。「これまで、“3強”(大迫傑、設楽悠太、井上大仁)と言われていたが、これで確実に“4強”になったと思う。今後、さらなる選手が出てきて、“5強”“6強”と言われるような状態でMGCを迎え、そしてオリンピックを迎えることができれば、瀬古リーダーたちが言っている目標を達成できると思う」と、これから続くMGCシリーズに期待を寄せました。

また、瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、服部選手が東洋大2年時の2014年に、30kmで1時間28分52秒の学生記録を樹立している実績を挙げ、「長い距離にも適応できる、能力のある子だなと思っていた。やっと素質が開花してくれて、我々も本当に嬉しく思う」と声を弾ませました。また、すでに「2時間5分台の力は持っている」と評価。「後半の35kmからの走りを見て、“まだまだ力がある”“(競い合う)相手がいたらもっと行くな”と感じた。末恐ろしい選手が出てきた」と話すとともに、「今日の服部くんの走りを見て、たくさんのいい選手が、ものすごい危機感を覚えると一方でやる気が出たのではないか。これから行われるMGCシリーズのレースで、まだまだいい選手が出てくる。皆さんも楽しみにして、応援していただきたい」と呼びかけました。

 

【MGC出場権獲得者コメント】

◎服部勇馬選手(トヨタ自動車)
優勝 2時間07秒27秒 =日本人1位
まだ優勝したという実感がないが、やってきた練習の成果がそのまま出たことが本当に嬉しい。今まで(経験した)3回のマラソンは後半失速することが多かったが、残り7kmを走ることができれば、おのずとこのタイムは出ると思っていた。その結果を出すことができたのですごく嬉しい。

ウォーミングアップ中から暑いという印象があって、スタート後も10km手前あたりまでは暑さを感じた。ただ、後半に関しては風もあり、曇ってほとんど汗もかかなくなっていた。また、折り返して(31.6km)からも追い風だったので走りやすく、「タイムを出せるんじゃないか」という期待を持ちながら走っていた。36kmの給水地点で(前に出たとき)は気づいたら(後ろが)離れていたので、ここはもう行ってもいいかなという感じで出た。特にスパートしたという意識はなく、少しリズムを変えて、ちょっと勝負してみようかなと思いだった。

自分の描いている理想のマラソン像は、「1km3分ペースをいかにどれだけ楽に持続させるか」。余裕度をもって3分ペースで走れたことに、すごく成長を感じている。今後、2分59秒、2分58秒と、その余裕度を短縮していければ、2時間5分台、6分台も見えてくるかなと思う。

この大会に向けては、それまで40km走を3カ月の間で2~3回くらいしかやっていなかったが、3カ月半前から45kmも含めて40km走を7回やり、また、120分走、150分走なども40kmの回数よりもうちょっと多いくらいやってきた。以前のマラソン練習に比べると、月間走行距離も平均して300kmくらいは増えている。また、(距離を)増やしても遅いタイムでやっていては、マラソンにつながらないと考えたので、ジョグの動きとレースの動きを、すべてにおいて同じ動きになるよう意識してやってきた。それが今回のマラソンのなかでのキーポイントになったと思う。

今回は30kmに行く前までに、周りのことが見える余裕があった。今後はラスト10kmとかではなく、もうちょっと前の段階で自分でスパートし、1人で逃げ切れるような力をつけたい。レースの主導権を握っていくことは、MGCにおいても大事になってくるはず。そうした強さやタフな精神面を、これから磨いていけたらなと思う。

今回、勝負所で勝ち切れたのは、すごくいいことだと思うし、後半もビルドアップできたが、MGCのコースはラストで上りがあるし、9月ということで気温も上がる。今回のマラソンとは全く違うレースになってくると思うので、そのへんの対策をしっかりしていきたい。また、2時間5分台を出された大迫(傑)さんに比べると、タイムは今ひとつだし、劣っているところも多い。少しでも近づけるように、また脅威になれるように、9月(のMGC)までしっかり練習したい。ケガのないように1日1日を大事にしたいと思う。


◎山岸宏貴(GMOアスリーツ)
6位 2時間10分42秒 =日本人4位 
今回の目標は、MGCを獲得することと、2時間10分を切ることだった。記録のほうは達成することができなかったけれど、後半しっかりと粘ることができて、(MGC)ファイナリストになることができたのはよかったと思う。また、福岡には、2年前にも出て、そのときはすごく悔しい結果に終わったのだが、その経験が今日に生きたのではないかと思う。

レースプランは、30kmまで1km3分ペースで刻んでいって、あとは残り12kmをひたすら粘って、2時間10分を切るというものだった。実際は、25km前で(先頭集団から)離れてしまい、福田選手、神野選手、野口選手の4人の集団で行くことになってしまった。しかし、そこまでペースは落ち込むことなく、ラスト2.195kmにつなぐことができ、また、順位を上げていくことができた。本来のレースプランではなかったが、自分の持ち味がしっかり出せたレースだったと思う。

マラソンを始めたのは社会人1年目で、2015年の延岡西日本マラソンが初マラソン。このときは2時間13分台。で、その後、12分台をすぐに出したが、以降は、そのあたりの記録がずっと続いた。けっこう(精神的に)しんどくて、競技をやめそうになった時期もあったが、コーチの花田勝彦さんと相談しながら練習を立て直していって、今年の東京(マラソン)で2時間10分14秒を出すことができた。そして、それが自信になって、MGCをとるために、この福岡国際マラソンに出ることを決めた。練習としては、東京マラソンに向けての練習がよかったので、そのときの内容にアレンジを加えて今回臨んだ。2時間10分を切ることはできなかったが、その練習は生きたのではないかと思う。


 
◎福田 穣(西鉄)
7位 2時間10分54秒 =日本人5位
(来年3月の)東京マラソンにも出場する予定だが、ここでMGCを確実に取りたいと思っていた。また、このグラウンドも、今日走ったコースも、日頃から走ったり通勤に使ったりしている地元のコース。ここでMGCを決めることで、福岡の方々に恩返ししたいと思っていた。タイムは良くなかったが、最低限実現させることができてよかったと思う。

自分はゴールドコーストマラソンで2時間09分52秒を出しているので、今回は2時間12分08秒を出せば(ワイルドカードで)MGC出場権が取れる状態だった。しかし、そこだけを狙って第2集団で進めても、(結果は)狙えないというのがあったのと、設楽くんや服部くんなど力のある選手が出ていたので、どれだけ戦えるか試したいという思いもあり、先頭集団で行けるところまでついていき、後半しっかり粘っていこうと思った。また、「サブテン」も狙う気持ちもあったので、前半からガンガン攻めていく気持ちで行っていた。前半暑かったことと、(ペースメーカーの)カロキ選手がきっちりペースを刻んでくれていたので、逆に、自分には少しきつく感じる部分が何回かあったが、コースは熟知しているので、途中途中で休んで、ハーフまでは少なからず先頭集団で行こうと思っていた。

しかし、ハーフを過ぎたあたりから、このまま粘り切ってしまうと一気に失速してしまうと感じたので、山岸くん、神野くんらと一緒に行けば後半も刻んでいけると考え、23~24kmからは敢えて押さえて走るような形にした。終盤、失速はしたが、自分が思っていたところでは行けたので、よかったのかなと思う。

昨年の実業団連合合宿で、自分より強い選手が自分より練習しているのを目の当たりにして、少なくとも練習量だけは多くしようと、昨年4月から毎月1000kmを超える走り込みを始めた。その後、8月の北海道マラソンで2時間15分11秒の自己記録を出し、タイムこそ15分台だったが、(優勝した)村澤明伸くん(日清食品グループ)らと後半まで競り合い、力がついていると実感できたことが、(急成長の)きっかけとなっている。今回も、前回のゴールドコーストも、調整という調整は全くしていないが、そうした走り込みによる「誰よりも練習しているんだ」という思いが自信になっている。




文:児玉育美/JAAFメディアチーム
写真提供:フォート・キシモト


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