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2019.06.04(火)

【男子110mHで高山選手が日本タイ記録をマーク!】布勢スプリント2019レポート&コメント


日本グランプリシリーズで、グランプリ鳥取大会として開催される布勢スプリントが6月2日、コカ・コーラ ボトラーズジャパンスポーツパーク陸上競技場(鳥取県立布勢総合運動公園陸上競技場)で開催されました。この大会は、直線のスプリント種目を中心として構成された競技会。「記録が出る大会」として認知されています。今年も、男女100mと男子110mH、女子100mHの4種目が、グランプリ種目として行われました。

 


■男子110mHで、高山選手が13秒36の日本タイ記録をマーク!

昨年、金井大旺選手(現ミズノ)が日本選手権で13秒36の日本新記録を樹立、今季に入ってからは泉谷駿介選手(順天堂大)が2.9mの追い風参考記録ながら13秒26をマークするなど、活況を呈している男子110mH。今大会は、日本選手権に照準を合わせるべく欠場した金井選手と連戦を考慮してこの大会にはエントリーしなかった泉谷選手は不在でしたが、高山峻野選手(ゼンリン)が2017年にマークした13秒44の自己記録を大幅に更新する13秒36(+1.9)の日本タイ記録、大会新記録で優勝。ドーハ世界選手権参加標準記録(13秒46)を突破するとともに、今季日本リストトップに立ちました。 

全3組で行われた予選を、ほかの2組が追い風参考記録となるなか唯一1.1mもの向かい風に見舞われながら、全体トップの13秒57で決勝に駒を進めていた高山選手。決勝は、スタート前まで強烈な追い風が吹いていたこともあり、フィニッシュ後に13秒39で止まったタイマーを見た瞬間は、「追い風参考だな」と思ったそうです。しかし、すぐに追い風1.9mであることが知らされ、一緒に走った選手たちから祝福を受けるなかで、速報値より0.03秒よくなる13秒36という正式記録もアナウンス。日本人3人目の「13秒3台ハードラー」の誕生となりました。 

レース後は、「シンプルに自己ベストが出たので嬉しいが、ここまで出るとは思っていなかった。風が強かったから出たのだと思う。次は、普通の風でこのタイムを出せるようにしたい。追い風1m(の条件)で換算すると13秒4くらいになってしまう。そこをしっかり13秒3台で走れるようにしなければ…」と冷静に振り返っていた高山選手ですが、記録が、当初の13秒39から、正式記録の13秒36になった瞬間の感想を求められると、「“どうせなら(日本新記録となる13秒)35に行けよ”と思った」という本音も飛び出して、報道陣を笑わせました。 

持ち味の後半の走りについては、「決勝は風に押されたので、しっかりと乗り込むことができたが、もっともっと(インターバルを)刻まないと…」と課題もあった様子。一方で、「このタイムで走れたことは、身体にしっかり記憶されて、いい経験になった。忘れないように練習でも生かしていきたい」と好感触もつかんでいます。「日本選手権では、スタートの速い金井くんと泉谷くんが飛び出て、僕と石川くんがついていく展開になると思う。そこにしっかりついていけるようになりたい」と、3週間後に迫った対決を見据えていました(高山選手の日本記録樹立コメントは、別記をご参照ください)。 

高山選手に続いたのは、今季急成長を遂げている石川周平選手(富士通)。13秒49でフィニッシュし、木南記念でマークした自己記録13秒50をさらに0.01秒塗り替えて13秒4台突入を果たしました。しかし、狙っていた世界選手権参加標準記録にはわずかに0.03秒及ばず。レース後には、「自己記録は嬉しいけれど、標準記録を突破したかった」と悔しさをにじませ、日本選手権での突破を誓っていました。
 

 

■桐生選手、予選・決勝ともに10秒0台で圧勝!

当初出場が予定されていた山縣亮太選手(セイコー)、多田修平選手(住友電工)、ケンブリッジ飛鳥選手(Nike)が欠場となり、「勝負」という点ではやや寂しさを否めなかった男子100m。しかし、日本記録保持者の桐生祥秀選手(日本生命)が、前日の会見で“9秒台を狙う!”と記録への挑戦を明言したことで、自身2度目の9秒台、さらには日本新記録誕生へと、期待が大きく高まり、当日は過去最高の7500人が観戦に訪れたなかで行われました。 

この種目も、他の種目同様に、風向きを配慮してバックストレートで実施。桐生選手は、追い風1.3mのなか行われた予選1組で、10秒04(+1.3)の大会新記録をマーク。その2時間35分後に行われた決勝でも、中盤以降で後続との差をぐんぐん広げて10秒05(+0.1)でフィニッシュしました。残念ながら9秒台突入は実現せず、ずっと吹いていた追い風がスタート直後にやや弱まり、風向も横向きに変わってしまったことが惜しまれましたが、一方で、予選・決勝ともに東京オリンピック参加標準記録(10秒05)を上回った桐生選手の強さと、高いレベルでの安定感が際立つ結果になりました。 

ミックスゾーンでレース結果について問われ、まず、「昨日(の会見で)言った通り自己ベストを狙っていたので、タイムとしてはうまくいってはいない」と答えた桐生選手は、実は、「本当は1本目で9秒台を出して2本目は棄権しようかなと思っていた」そうですが、9秒台が実現できなかったことで、「1本目(予選)は、30mくらいまでがもたついていたので、(決勝では)そこを意識して走った」と言います。もともとはこの布勢スプリントで狙う予定だった10秒05(東京オリンピック参加標準記録)の突破をゴールデングランプリで達成(10秒01)してしまっていたこと、さらにはライバルと呼べる選手たちが欠場していたことなどもあり、モチベーションや集中力が高まりづらい状況でしたが、そこを、「今回は、いつも以上に自分で緊張感を高めて走った。普通の試合ではライバルがいるなかで落ち着いたり、緊張感を高めていったりするが、今回は緊張感がほぼない状態から、自分で100(%)まで持っていった。それが(予選・決勝と)2回もできたことはよかったと思う」と振り返りました。 

ジャスティン・ガトリン選手(アメリカ)に0.01秒差で惜敗したゴールデングランプリの反省から、ポイントとして掲げていた「残り20m」ついては、「ゴールデングランプリの時よりはうまくいった」と振り返る一方で、同時に「やっぱり(スピードレベルを)もう一段引き上げたい」と、決して満足はしていない様子。「あと3週間でトップギアまで上げていき、日本選手権では、ライバルがいるなかでしっかり優勝して、世界選手権の代表をもらいたい」と力強く言いきりました。 


 

■女子100mHは木村選手、女子100mは土井選手が優勝

女子100mHは、アジア選手権で金メダルを獲得している木村文子選手(エディオン)、同じくアジア選手権で銅メダルを獲得した青木益未選手(七十七銀行)、東日本実業団で向かい風0.4mのなか13秒14の好記録をマークしている福部真子選手(日本建設工業)、ダイヤモンドアスリートで、1週間前の関東インカレでは2.6mの追い風参考記録ながら13秒25をマークして2位に食い込んだ小林未歩選手(筑波大)らが出場。決勝は、予選で13秒19(+1.3)をマークして全体トップで通過していた木村選手が、日本記録13秒00(金澤イボンヌ、2000年)に迫る13秒01でフィニッシュして会場をどよめかせましたが、追い風が3.5mで、残念ながら参考記録となりました。

参考記録にとどまったことは、「ちょっと残念だったが」としながらも、ウォーミングアップの段階から、前半の入りに調子の良さを感じていたという木村選手は、「実際に予選を走ったら、GGPのときよりも、もう一段階高いトップスピードで前半を入ることができた」と振り返り、その影響で、「GGPのときに感じた後半以上に、(インターバルが)詰まったように思う」とコメント。「中盤までのスピードが高かったので、後半でもう一段階上げた状態で(インターバルの走りを)さばききれるようにするということをやっていきたい。レース(で場数)を踏んで、練習のなかでもそのリズムをたたき込んでいくのが重要かなと思う」と話し、日本選手権の前のこの段階で、そのリズムが身体のなかに入ってよかった」と声を弾ませました。



女子100mは、今季、ここ数年の低迷から復調の兆しを見せていた土井杏南選手(JAL)が、予選で今季日本最高となる11秒52(+1.9)のシーズンベストをマーク。決勝は「ちょっと狙ってしまって動きが硬くなったところがあった」ものの、11秒55(+2.2)で優勝を果たしました。

土井選手の100mの自己記録は、埼玉栄高2年の2012年にマークした11秒43。この記録は今も高校記録として残り、同年、土井選手はロンドンオリンピックへの出場も果たしていますが、11秒5台をマークするのは実に4年ぶり。しかし、レース後は、「もう少し走れるかなという感じがあったので、物足りなさがある」と、まだまだ改善の余地はある様子を示しました。「今季は、“長所を生かしきる走り”というのをテーマにしている。短所という言葉をなくして、自分の武器であるスタートの走りを最大限に伸ばしきる走りをしたい」と話す土井選手が日本選手権で目指すのは、ずばりまだ達成したことのない「優勝」と、ドーハ世界選手権参加標準記録の「11秒24」。「ドーハに行きたい。そこはぶれずにやっていきたい」と瞳を輝かせました。

 

 

【新記録樹立者コメント】

男子110mH
高山峻野(ゼンリン) 優勝 13秒36(+1.9)=日本タイ記録

 (速報)タイムを見て、まず、「あ、追い風参考だな」と思い、ゴールした直後も(一緒に走った)みんなと「追い参(追い風参考)かあ」と話していたので、(公認だったことに)ちょっとびっくりした。速報タイムより0.03秒上がって、正式記録が13秒36となったが、「どうせなら(日本新記録となる13秒)35に行けよ」(笑)と思った。 

今日は予選ですべてを出しきろうと思っていて、全力を尽くしたので、レース的には予選のほうがよかったと思う。予選は残念ながら向かい風。あれが追い風で、気持ちよく走れていれば、もっといいレースができたのではないかと思う。逆に、決勝に向けては、少し脱水気味だったので、しっかり水分をとることと、とにかくケガをしないように走ろうということを意識していた。まさか、ここで記録が出るとは思っていなかったのでびっくりしている。

(課題としていたインターバルは)決勝は風に押されたので、しっかりと乗り込むことができたが、この風のなかでも、もっと刻めるようにならないといけないと思った。レース後半は抜き脚がすごくハードルと近くなってしまい、感覚的にはほとんど全部で脚をぶつける状態になってしまった。「まだ(インターバルを)さばけていないな」という印象がある。 

今季は技術的なところは特に進歩していない。とにかく若いうちにウエイト(トレーニング)とかをしっかりやって走力を上げようというところを徹底してきた。ウエイトトレーニングで挙げられる重量も増えてきているし、100mでも春先にベストに近いタイムが出ている。今回、このタイムで走れたことは、身体にしっかり記憶されて、いい経験にもなったと思う。この刻み(の感覚を)を忘れないように、練習でもしっかりと生かしていきたい。 

日本選手権では、スタートの速い金井くんと泉谷くんが飛び出て、(後半型の)僕と石川くんがついていく展開になると思う。正直なところ(序盤から大きくリードを奪う)泉谷くんには勝てる気がしていないのだが、そこにしっかりついていけるようになりたい。また、これで世界選手権の標準記録も突破したが、まだ代表入りできるかはわからない。いずれにしても自分が目標としているのは以前から変わらず自己ベスト。もっともっと更新していきたい。

日本選手権に向けては、これから技術的なことを直すのは難しいので、疲労を抜いて、しっかり体調を整えることを考えたい。また、メンタル的には「深く考えすぎず、自分らしく」を大切にすること。まずは自己ベストをしっかり出していこう気持ちで取り組んでいきたい。

 

文・写真:児玉育美(JAAFメディアチーム)


第103回日本陸上競技選手権大会

いよいよ日本選手権! 6月27日(木)~30日(日)福岡市博多の森陸上競技場で4日間開催!(大会サイト)


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