2019.01.08(火)選手

【ダイヤモンドアスリート】第5期新規認定アスリートインタビュー第1回 出口晴翔選手




ダイヤモンドアスリート」制度は、2020年東京オリンピックと、その後の国際競技会における活躍が期待できる次世代の競技者を強化育成することを目指すとともに、その活躍の過程で豊かな人間性とコミュニケーション能力を身につけ、「国際人」として日本、さらには国際社会の発展に寄与する人材に育つことを期して、2014-2015年シーズンに創設されました。昨年11月からは、継続競技者8名のほか、新たに3名の競技者を加えた全11名が認定され、第5期がスタートしています。

ここでは、第5期(2018-2019)認定アスリートとして、新たに加わった競技者のインタビューを掲載していきます。第1回は、400mHの出口晴翔選手(東福岡高校2年・福岡)です。

 

◎取材・構成・写真:児玉育美/JAAFメディアチーム

 

ユースオリンピックで金メダルを獲得

―――出口くんといえば、まず、ブエノスアイレス(アルゼンチン)で行われたユースオリンピックの話からお聞きしなければ! 優勝、おめでとうございます。けっこう長い遠征でしたよね。どのくらいの期間だったのですか?
出口:ありがとうございます。アルゼンチンには3週間くらいいました。

―――陸上競技の試合自体は、大会の終盤でした。
出口:はい。現地入りしてから試合まで2週間ありました。調整に2週間も必要ないので、最初の1週間はけっこう追い込む練習をして、そのあと調整して…。日本で行うのと同じ形で進めることができました。

―――海外遠征は、ユースオリンピックアジア予選が行われたバンコク(タイ)に続いて、2回目?
出口:はい、そうです。

―――2回目で、いきなり地球の裏側へ…(笑)。
出口:はい(笑)。移動時間が長かったので、けっこうきつかったです。

―――また、この大会は、ラウンドを勝ち抜いていく通常の競技方法とは違う形でしたね。ステージ1、ステージ2とレースを2回行い、両方の合計タイムで順位を決めるという方式でした。戸惑いはなかったのですか?
出口:競技方法については、前から知らされていたので、そんなに驚くことはありませんでしたね。ただ、ステージ1が終わってから、ステージ2が行われるのは3日後。2日間空くというのは普段はないことなので、その調整をどうしようかなとは思いました。でも、そこも、あまり焦ることなく、先生と話し合っていた通りのことができました。

―――ユースオリンピックの男子400mHは、通常よりもハードルの高さが低いU18規格で実施されるわけですが、ステージ1(51秒40)、ステージ2(51秒28)ともに1位。合計タイムは1分42秒68と2位(1分48秒84)に圧倒的な差をつけての金メダル獲得となりました。レース自体はどうだったのですか?
出口:ステージ1は1レーンで、そのことを知ったのが、けっこう試合日が近くなってからだったので、最初は「ちょっと厳しいかもな」と思いました。でも、コーチの先生が、みんなの邪魔にならないように気を配りながら、サブトラックの1レーンにハードルを準備してくださって、練習することができたんです。そうした対策をとれていたので、試合には自信を持って臨むことができました。

―――1レーンで走って、1位という結果だったわけですから、ステージ2のほうは楽勝だったのでは?
出口:優勝が見えてきていたので、逆にステージ2のほうが緊張していたかもしれません。また、地元アルゼンチンの選手が出てきたときは、選手紹介などでも歓声がすごくて、なんか圧倒されるような気分になりました。でも、優勝がかかっているので集中しようと思い、レース中は周りのことは気にせず自分のレーンだけを見て走りました。

―――表彰式で、金メダルをかけてもらったときの気持ちは?
出口:全然実感がなかったです。「絶対に優勝する」とは思っていたけど、「本当に優勝してしまったんだ」と思って…。また、国歌が流れたときには嬉しくも思ったのですが、これからの競技に対して、追われる立場としてのプレッシャーなんかも感じたりして、けっこう複雑な気持ちでしたね。

 

陸上は、小学1年から。

短距離から駅伝まで、いろいろな種目に挑戦

―――競技結果を調べてみたら、小学生のころからお名前が残っていました。福岡の苅田与原(かんだよばる)ランニングクラブに所属していましたね。陸上は、いつから始めたのですか?
出口:陸上自体は、小学1年のときから始めていて、ハードルは5年生になってやるようになりました。

―――どんなきっかけで?
出口:幼稚園の友達が、そのクラブに入っていたんです。自分も運動が好きだったので、やってみようかなと思って…。

―――最初は、短距離を?
出口:小学校と中学校のころは、夏は短距離、冬は長距離という形でした。

―――駅伝にも出ていますものね。小学5年生のときには、全国小学校クロカンリレーにも出場しています。
出口:ああ、そうですね。出ました。

―――初めての全国大会は、クロカンリレーだったんだなと、ちょっと驚きました。
出口:でも、それは福岡県から1チームが推薦で出るという形なので、県で勝って出場したというのではないんです。

―――なるほど、その1チームが苅田与原ランニングクラブだったわけですね?
出口:そうです。

―――ハードルは、どういうきっかけで取り組むようになったのですか?
出口:小学生のときにハードルを始めたのは「かっこいい」と思ったからです。中学校では1年のときは100mに出ていたのですが、県で戦うとなると決勝にも残れないレベルだったのと、顧問の先生から「ハードルのほうが、可能性がある」と言われたので、110mHに切り替えました。中2からはハードルをメインでやるようになりました。

―――先ほど「冬は長距離」と仰っていましたが、苅田中時代には、駅伝のほかにもいろいろな種目に挑戦していますね。ハードルはもちろん、400mもやっているし、800mも走っています。
出口:いろいろな種目を試してみたかったんです(笑)。中1のときには、3000mにも出たことがあります。

―――そのなかで、110mHで記録が伸びてきました。中学2年のジュニアオリンピックで2位(Bクラス110mH:14秒77)。これがトラック&フィールドで出た最初の全国大会ですか?
出口:はい。

―――中2のジュニアオリンピックで2位になったら、「来年は、全中(全日本中学校選手権)で頑張ろう」という気持ちになったのでは?
出口:全中の110mHはハードルが低い(注:ハードルの高さが91.4cmで行われる)ため走力が鍵になるのですが、自分は100mのスピードがなかったので、全中では決勝(進出)を目標にしていました。逆に、ジュニアオリンピックでは(出場するAクラスが)ジュニアハードル(注:ハードルの高さが99.1cmで行われる)になるので、そこで優勝することを狙っていたんです。

―――では、決勝進出を目標にして臨んだ全中で6位(14秒25)という結果は、満足できるものだったのでしょうか?
出口:はい。

―――それで、ハードルが高くなるジュニアオリンピックのほうで優勝を狙っていたのですね。結果は14秒71の自己タイ記録で2位。優勝したのは、全中で優勝した久保田倖輔選手(播磨南中)でした。そちらは悔しさのほうが大きかったでしょうか?
出口:そうですね。そのときは、けっこう悔しかったのですね。

 

高校から始めた400mHで、2年生にしてインターハイ覇者に

―――高校は、東福岡高校に進みました。きっかけは?
出口:中学のころ、1つ上の学年に、花岡一摩さんという先輩がいて、優しくしてもらっていたんです。自分と同じ400mと110mHをやっていて、憧れ的な存在でした。その花岡先輩が東福岡高校に行っていたので、「一緒のところに行こう」と。

―――同じ中学だったのですか?
出口:いえ、学校は違っていたのですが、試合で会ったときに親しくしていただきました。

―――その花岡選手は高校では400mHに取り組んでいて、出口くんが入学した2017年の山形インターハイでは、2年生として最高位となる6位に入賞しました。このインターハイでは、出口くんも400mHで出場。1年生ながら準決勝に進んで高1歴代3位となる52秒56をマークし、あとわずかのところで決勝進出を逃すという結果を残しています。秋のU18日本選手権では3位に食い込んで、優勝した花岡選手と一緒に表彰台に上がりました。出口くんは、どういう経緯で400mHを始めたのですか?
出口:実は、中学のときから顧問の先生に「高校からは400mHをしなさい」と言われていて、それもあって110mHと400mをやっていたんです。それで高校に入って400mHを始めました。110mHも続けることはできたのですが、110mHと400mHはハードリングとかリズムとかがちょっと違っていて、不器用な自分にはその2つを一緒にやっていくという選択肢がなくて…。400mHは高校で初めて経験する種目だったので不安もありましたが、でも、110mHだと、さっきも言ったスピードが必要になってきます。そのあたりも考えて、「ここで400mHに切り替えて、もっと上を目指してみよう」と決めました。

―――2018年シーズンは、2年生ながら400mHでインターハイ優勝というところまできたわけですが、それは自分としては想像以上の結果だったのですか?
出口:4月という早い段階で、自己ベストの52秒03が出て、そのときは、51秒台はインターハイ前に出せるかなと思っていたのですが、そこからなかなかベストが出なくて、ちょっとスランプ気味だったんです。インターハイでも予選は52秒69だったので、そこでも焦りがありました。

―――そんななか、準決勝で51秒51の自己ベストをマーク。そこで一気に波に乗った印象があります。
出口:準決勝は、自分は3組目で、1組目に花岡先輩が入っていました。花岡先輩とは、一緒に決勝に行くことを目標にしていたのですが、花岡先輩が準決勝敗退という形になってしまいました。花岡先輩は追われる立場でしたから、絶対に優勝したかったはず。それなのにレース後、泣きながら自分に「頑張れ」と言ってくれて、そこで「先輩のぶんも自分が頑張ろう」と準決勝は周りの声が聞こえなくなるくらい集中して走りました。ゴールしてタイムを見たら自己ベスト。そして(全体でも)トップ通過だったので、「これはもう優勝するしかない」と思いました。

―――そして、決勝では、さらに自己記録を塗り替えて、高2歴代5位の51秒17で優勝を果たしました。どんなレースでしたか?
出口:最後のほうまで、隣の人と競っていましたが、後半で負けることはないと思っていたので、ラストの直線に入ってからは、「勝てるだろうな」と思うレースでした。でも、自分としては高2歴代1位(50秒71)の記録も狙っていたので、自己新での優勝でも、悔しい部分がありましたね。

―――このレースのインターバルの歩数は? 
出口:全部15歩です。

―――前半はかなり詰まる感じだったのでは?
出口:そうなんです。詰まるんですけど、自分の持ち味が後半なので、前半で詰まるぶん逆にリラックスできて、みんなよりもスピードを出さずに15歩で行くことができるんです。置いていかれる展開にはなりますが、いつもリラックスした状態で5台目まで通過して、そこから切り替えることを意識しています。インターハイのときは、その状態のまま、前半が普段よりも速いペースで行けた感じがあったので、心にも余裕があって、いろいろ考えながら走ることができました。

―――そういう状態になるのは初めて?
出口:そうですね。インターハイは集中(状態)に入っていたと思います。

 

「走力アップ」を課題に、自分を追い込む

―――3年生となる来シーズンは、高校記録(49秒09=U20日本記録)が目標になってくる?
出口:はい。

―――そのためには、まず、50秒を切っていかなければなりません。
出口:(歴代)1位のなかでも、ずば抜けて1位の記録ですから(笑)。でも、インターハイで優勝したあとのインタビューで、みんなの前で、「高校記録を更新したい」と言ってしまったので(笑)。ただ、逆に、そのくらい言っておかないと、自分にも気合いが入らないだろうからよかったのかもしれません。この冬が勝負だと思うので、もっと追い込んでいくために、常に“前に誰かいる”と思って走っていますね、今は。

―――高校記録保持者の為末大選手(当時、広島皆実高、1996年)は、その記録を出した段階で400mも45秒台(45秒94)で走っています。400mも走力を高める必要がありそうですね。
出口:そうですね。110mHから400mHに転向した理由は“走力”でしたが、ここまで来たら、走力から逃げてはいけないなと思っています。先生ともそう話し合っていて、来シーズンは100mや200mの走力も上げようと、4×100mRのメンバーに入ることも考えています。

―――400mのベストは、48秒28ですか。なんか、もっと走れそうな気がします。
出口:マイル(4×400mR)では、ラップタイムはもっと出ているのですが…。

―――どのくらい?
出口:1走で47秒4とかがベストなので…。

―――では、そのくらいで走れる力はすでにあるということですよね。
出口:400mと400mHって、試合日が分かれていても両方出るとけっこうきついから、どうしても400mのほうをセーブして走ってしまうんです。だから、記録会とか、400m1本に絞って(出場して)全力で走るレースなども考えていきたいなと思っています。

―――確かにインターハイ路線で、400m、400mH、4×400mR、さらに4×100mRにも出場するとなると、なかなかすべてでベストを狙っていくのは難しいですからね。高校最後のシーズンに向けて、この冬、目標や課題にしていることは?
出口:やはり走力を上げることですね。あと、インターバルを13歩で行くために、日ごろから大きい走りをするように心がけています。

―――これまでのオール15歩から変えていくわけですね。13歩で行くのは、どこまでをイメージしているのですか?
出口:5台目までです。

―――そこで切り替える? ハードルは、どちらの足でも踏み切れるのですか?
出口:いえ、右足が踏み切りで、左は無理なので、奇数の歩数で跳んでします。

―――今も、それは変わらずに?
出口:はい。でも、13歩からいきなり15歩に切り替えるのが難しいとなると、14歩で行くことも必要になるのかなと。そうなると、逆脚で行く練習もしておかなければいけないな、と思っています。

―――110mHの経験が長いだけに、逆脚での踏み切りをマスターするのは大変ですよね。
出口:でも、努力はできるほうだと思っているので、やろうと思ったらできると思います。

―――それは大切な長所ですね。ほかに長所だと思うことはありますか?
出口:自分を追い込むのは得意だなと思います。1人では練習でなかなか追い込めないことがあると思うのですが、例えば、走るときに自分よりも強い人を思い浮かべて、「このままじゃまだ負けたままになる」と思ったら、けっこう限界を超えることができるんです。もちろん、そのあとはすごくきつくて、脚がもげそうに感じますけど(笑)。

―――それは、400mHをやっていくうえでは、すごく大切だし、強みになりますね。練習はもちろん、試合でも終盤でうまくまとめていくためには必要です。
出口:けっこう安定しているほうだと思いますね。

―――では、逆に短所は?
出口:飽きっぽいところがあって、「自分にとっていらないもの」と判断してしまったら、それをきっぱりやめてしまうことがあるところです。先生から言われたことで、本当は重要なことでも、自分がいらないと思ったら、やめておこうと考えてしまうんです。言われたことをきちんと分析して、自分に必要なのかをいったん考えることをしなきゃ、と思います。

―――すでに心がけている?
出口:そうですね。指摘とかされると、すぐに「いや、今のはいいやろ」と思ってしまうので…(笑)。そこは冷静になって、「自分のためにしてくれている指摘なのだから」と判断するようにしようとしています。

 

いつか、オリンピックでも同じ色のメダルを

―――ダイヤモンドアスリートについては、ご存じでしたか? また、認定されたと最初に聞いたときは、どう感じましたか?
出口:ダイヤモンドアスリートのことを知ったのは高校1年のときです。「こういうのがあるんだ」と思ったのと、選ばれている人が自分の知っている(活躍している)人ばかりだったので、「自分もこういうアスリートになれたらいいな」と思っていました。今回、インターハイに優勝しましたが、秋はユースオリンピックに行くことになって、国体やU18日本選手権には出られないとわかっていたので、(選ばれるかどうかは)ユースオリンピックの結果次第だろうなと思っていたんです。なので、ユースオリンピックで優勝して、ダイヤモンドアスリートに選ばれたということは、光栄なことです。

―――目標とするアスリートはいますか?
出口:自分の種目ではないのですが、ハンマー投の室伏広治さんです。どうやったら、あんなに安定して結果を出し続けられるのか。世界チャンピオンとか金メダルとかは、日本陸上界にとって貴重なものだと思うので、どのようにして、そこまでなれるのかなど、思うところがたくさんありますね。尊敬しています。

―――直接会ったことは?
出口:ユースオリンピックのときに選手村に来てくださって、お会いすることができました。握手してもらったのですが、手がめちゃくちゃでかくて(笑)、びっくりしました。

―――いつか、ゆっくり話を聞いたり、アドバイスをもらえたりするような機会があるといいですね。
出口:はい。

―――出口くんご自身は、どういう選手になりたいと思っていますか?
出口:まずは来年のインターハイで、ちゃんと2連覇して、それから国体、U20日本選手権などで記録を狙っていって、高校記録を更新することが目標です。その先としては、オリンピックとかも視野に入れて、東京、パリ、ロサンゼルスを目指したい。自分は今回、ユースオリンピックだったので、いつか、本当のオリンピックのほうで同じ色のメダルを取れたらいいなと思っています。

―――しっかりと自分を追い込んで、いい冬期トレーニングを積んでください。来季の活躍を楽しみにしています。


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