2019.09.10(火)その他

【記録と数字で楽しむMGC】女子の走力バランス分析

9月15日(日)、男子8時50分、女子9時10分スタートで、2020東京五輪マラソンの代表を決める「MGC(Marathon Grand Championship)」が行われる。

ここでは、記録や数字を中心に、知っておくとMGCをより一層楽しく観戦できそうなデータを紹介する。


【女子の走力バランス分析】

▶図5~7を拡大してみる

▶鈴木亜由子プロフィール


▶松田瑞生プロフィール


▶前田穂南プロフィール



「三強」との評価が高い鈴木、松田、前田穂南の3人のグラフが図5・6・7だ。

「図1」の鈴木は、マラソン経験が2018年8月の北海道での1回で2時間28分32秒。スタート時が気温22.0℃・湿度75%。20㎞付近で25.5℃、フィニッシュ時は、27.8℃・60%という暑い中でのレースだった。そのため、5000m・10000m・ハーフのプロットと比較してマラソンがかなり低い位置にある。回帰直線の傾きを示す「A」の値も、これに引きずられて「-0.79031」と勾配が大きくなっている。マラソンを除く3種目から計算すると、y=-0.52296logx+7.4314 と勾配は緩くなり、これをマラソンまで延長すると「2時間20分18秒」という数字になる(推定値の標準誤差を考慮すると2時間20分01秒~20分36秒)。このところの日本のレベルからするとすごいタイムだ。

後述(後日掲載)の通り高橋進氏の気温がタイムに及ぼす影響というデータによると、レース中の平均気温を25~26℃の場合、その低下率は「暑さに強い選手」で「2.5~3.0%」。「暑さに弱い選手」で「7.0~7.5%」である。これから逆算すると、暑さに強い選手の場合、本来であれば「2時間24分13秒~24分55秒」くらいで、弱い選手の場合は「2時間18分11秒~18分49秒」くらいの力があるはずということになる。平均値ならば、「5%前後の影響」ということになり、これからすると2時間21分30秒前後で走れる計算になる。

これまた後述するが、気温が25℃を超えた1990年代の世界選手権と五輪での成績とBMIの関係を調べたところ「BMIの値の小さい選手ほど好成績を残している」という結果だった。鈴木のBMIは「16.02(154cm・38kg)」で、男女の出場者43名中最も小さな値だ。夏の北海道を制したことやこのBMIのデータからしても、鈴木が「暑さに強い」ことは間違いないだろう。

また、鈴木の2017年以降のトラックとハーフの記録(15分20秒50、31分27秒30、67分55秒)から推定したタイムは、2時間19分14秒。野口みずきさんが、2005年のベルリンでマークした日本記録2時間19分12秒に並ぶレベルである。野口さんがこれをマークした時の2003年以降の3種目のベストは、あまり走る機会がなかった5000mは15分44秒44(2003年)だったが、10000mは31分21秒03(2004年)、ハーフが68分29秒(2003年)。これと比較しても、トラックとハーフの力からすると鈴木にも「19分台の力」がある可能性は高そうだ。

「図6」の松田は、10000mとマラソンの記録からすると5000mとハーフの記録が低過ぎる位置にある。そのため、回帰式の傾きは「-0.4222」と普通ではあり得ないような緩い数値となっている。10000mでは2017・18年の日本選手権で鈴木をラスト勝負で下して2年連続タイトルを獲得した。その走力からして、5000mもハーフももっと力があることは間違いない。参考までに10000mとマラソンの記録(31分39秒41・2時間22分23秒)から5000mとハーフのタイムを推定したところ、15分22秒24と69分01秒になる。2年連続10000m日本チャンピオンのスピードに加え、2018年に2回走ったマラソンでともに2時間22分台をマークした安定性も高い評価につながっている。

「図7」の前田の4種目のベストは、すべて2018年のもの。17年の北海道マラソンを2時間28分48秒で制し、女子のMGC出場権獲得第1号となった。この時は、スタート時が24.8℃・47%。湿度こそ40%台と終始低めではあったが、30㎞過ぎまで太陽が照りつける中、5㎞過ぎから30㎞過ぎまで気温がほぼ28℃前後という暑い条件だった。

鈴木のところでふれたが、高橋進氏のデータによると、28℃の気温がタイムに及ぼす影響は、暑さに強い選手で「4.0%」、弱い選手ならば「9.0%」になる。これから逆算すると10℃くらいの「いい条件」であれば「2時間16分31秒~2時間23分05秒」で走れる可能性があることになる。平均を「6.5%」とするならば、「2時間19分44秒」だ。「2時間16分台」はともかく、鈴木と同様に前田も「暑さに強い選手」のはずで「20分前後」の力はありそうだ。このあたりもメディアから高評価を得ている所以なのだろう。ちなみに、前田のBMIは「16.69(166cm・46kg)」である。



以上、少々難しい統計学のことなども紹介したが、「MGC観戦」の一助になれば幸いである。



野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)



▶マラソングランドチャンピオンシップ

兼 東京2020 オリンピック日本代表選考競技会
兼 第103 回日本陸上競技選手権大会

公式サイト:http://www.mgc42195.jp/

▶8 時50 分 男子マラソンスタート
▶9 時10 分 女子マラソンスタート

男子:TBS テレビ系列全国ネット、TBS ラジオ
女子:NHK 総合、NHK ラジオ
コース:明治神宮外苑発着(日本陸上競技連盟公認コース)
明治神宮外苑いちょう並木~四ツ谷~水道橋~神保町~神田~日本橋~浅草雷門~銀座~新橋~芝公園~日本橋~神保町~二重橋前~明治神宮外苑いちょう並木

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