2024.05.07(火)大会

【日本選手権10000m】大会ハイライト:男子・葛西/女子・五島ともに自己ベストで初優勝!前田はU20日本記録を更新



第108回日本選手権10000mが、来年8月にフランスで行われるパリオリンピック日本代表選考会を兼ねて、5月3日に静岡・エコパスタジアムで開催されました。
男女ともに、パリオリンピック参加標準記録(男子27分00秒00、女子30分40秒00)の突破はならなかったものの、男子では、社会人2年目の葛西潤選手(旭化成)が日本歴代4位の27分17秒46で初優勝を果たしたほか、 3位でフィニッシュした前田和摩選手(東京農業大)が27分21秒52のU20日本新記録を樹立するなど、若手の躍進が目を引くレースに。また、3連覇中の廣中璃梨佳選手(JP日本郵政G)が欠場となった女子では、五島莉乃選手(資生堂)が、先頭に立った中盤以降を独走で押しきり、自己記録を日本歴代6位となる30分53秒31へと更新。初めてとなる日本タイトルを獲得しています。


女子10000m

この日は、昼間に日本グランプリシリーズ静岡大会として静岡国際陸上が行われたのちに、ナイトゲームとして日本選手権10000mが実施されるスケジュール。朝から快晴に恵まれた会場のエコパスタジアムは、正午には気温が25℃まで上がり、夏を思わせる日射しとなりましたが、風がぴたりと収まった日没すぎあたりから、気温も徐々に下がり、長距離のトラックレースには上々のコンディションに。19時30分にスタートした女子10000mは、気温18℃、湿度76.%、南南西の風0.1m(主催者発表による)という条件下でのレースとなりました。



日本選手権3連覇中で、昨年のブダペスト世界選手権に入賞したことで、今大会でオリンピック参加標準記録(30分40分00秒)を突破すれば、順位を問わず代表に即時内定する状況にあった廣中選手は、コンディション不良により残念ながら不出場。このため、点灯ペースを3段階に分けた電子ペーサー(ウェーブライト)は、最も速いグリーンライトが、フィニッシュタイム30分50秒を想定した1周(400m)74秒0のペースに設定されました。参加標準記録には届かないものの、それでも出場全選手には自己記録を大きく上回るペース。オリンピック出場を期す選手たちが、WAワールドランキングにおいてターゲットナンバー内に収まることができるよう、ポイントの上積みに挑んでいくための戦略です。

前回に続いてペースメーカーとしてオープン参加したジュディ・ジェプングティチ選手(資生堂)を含めて全11名と、絞られた人数で行われたレースは、スタートするとすぐに、前回4位で、2022年オレゴン・2023年ブダペストと、至近の世界選手権に連続出場している五島莉乃選手(資生堂)が勢いよく飛び出し、各選手がそれに続いていく形で戦いの火蓋が切られました。最初の1周を終える直前でジェプングティチ選手が先頭に立ち、1周は75秒(以下、1000mごとの通過は場内発表の記録。1周ごとの通過は場内タイマーから算出したものを採用)で通過。これに五島選手、小海遙選手(第一生命グループ)、高島由香選手(資生堂)ほか全選手が縦一列で連なっていく入りとなりました。

2周目に入ると集団は大きく2つに分かれ、先頭グループは1000mを3分06秒で通過しましたが、74秒ペースで3周目に入った1200m地点あたりで、高島選手、矢田みくに選手(エディオン)、川村楓選手(岩谷産業)の3選手が後れ、ジェプングティチ選手につくことができたのは五島選手と小海選手の2人になってしまいます。この3選手は2000mを6分10秒(この間の1000mは3分05秒、以下同じ)で通過。その後、五島選手が1周74秒を示すグリーンのライトを、やや先行するような形でジェプングティチ選手についていったことで、6周目を終えたあたりから小海選手との間に若干の差が生じるようになったものの、グリーンライトから外れることなく歩を進める小海選手も74秒のペースを維持。先頭は3000mを9分15秒(3分05秒)で通過していきました。しかし、そこからの2000mで、懸命に前につこうとする小海選手の様子に余裕がなくなり五島選手との距離がじりじりと開き始めることに。また、レースを引っ張っていたジェプングティチ選手も、ペースメイキングの目安として点灯させていたブルーのライトについていくのが難しくなっていきます。中間点となる5000mは15分24秒(3分05秒)で過ぎましたが、4600mから5200mの1周は75秒に落ちてしまいました。



ここで自らレースを動かすことを決めたのが五島選手。レース後、「ジュディがきつそうだったから、“ここは自分でペースを刻んでいくしかないな”と思った」と振り返ったように、残り12周となった5200mからの周回に入ると、ジェプングティチ選手をかわしてバックストレートで先頭に。その周回と次の周回を73秒に引き上げて、6000mを18分29秒(3分05秒)で通過し、後続との差を大きく広げていきます。

独走態勢となった五島選手は、6000mを過ぎて、ややペースダウンしながらも、懸命にグリーンライトを追ってペースを維持しようとしますが、残り8周の周回で、徐々に電子ペーサーとの距離に開きが出てしまいます。しかし、自身「きつかった」とのちに明かした6000~7000mの1000mを3分08秒でしのぐと、8000mを24分43秒、9000mを27分49秒と、3分06秒ペースに持ち直す粘りを披露。ラスト1周を71秒で回って最後の1000mを3分04秒に引き上げ、昨年の日本選手権で出した自己記録(30分58秒83)を大幅に更新する30分53分31(日本歴代6位)をマークし、日本選手権初優勝を飾りました(五島選手の優勝コメントは、こちらをご参照ください)。

2位で続いたのは小海選手。前回マークした自己記録(30分57秒67)から考えると、リスクの高いハイペースでの前半となったなか、優勝争いから後れてもよく粘り、31分10秒53でレースをまとめました。3位には、矢田選手、菅田雅香選手(JP日本郵政G)との競り合いを制した兼友良夏選手(三井住友海上)が31分59秒29で食い込んでいます。


男子10000m

前回大会で日本歴代3傑を塗り替えた3選手が顔を揃えた男子は、20時10分にスタート。気温はさらに下がって17.7℃に、湿度78.0%、西南西の風0.2mと、女子同様に良いコンディション下でのレースとなりました。直前に欠場者が出たこともあり、ペースメーカーとしてオープンで参加したエマニュエル・マル選手(トヨタ紡織)を除くと出場選手は23選手に。優勝争いのための電子ペーサー(グリーンライト)は、女子同様にWAワールドランキングのポイントを上げていくことにフォーカスして、日本記録(27分09秒80、塩尻和也、2023年)を上回るオリンピック参加標準記録(27分00秒00)ではなく、27分22秒00のフィニッシュタイムを狙って設定されました。レースの流れを考慮し、最初の1000mを1周64秒8(1000m2分42秒ペース)、1000~9000mまでを1周66秒0(1000m2分45秒ペース)、最後の1000mを64秒0(2分40秒)と、細かくペースを調整しての実施です。



スタートしてすぐにマル選手が先頭に立つと、後続はロジスティード所属の藤本珠輝・四釜峻佑選手をはじめとして、縦に長く連なって続いていく隊列となりました。前方には山口智規(早稲田大)・前田和摩(東京農業大)の学生陣が、その後ろに駒澤大出身の太田智樹・鈴木芽吹(以上、トヨタ自動車)、篠原倖太朗(駒澤大)の3選手が続き、葛西潤(旭化成)、塩尻和也(富士通、前回覇者、日本記録保持者)、さらには相澤晃・井川龍人・市田孝(以上、旭化成)といった選手たちが中団に位置しています。

先頭は、最初の2周は65秒で入って1000mを2分42秒で通過。その後は、1周66秒ペースに落として2000mを5分27秒(2分45秒)と、設定通りにレースを進めていきました。3000mを28分12秒(2分44秒)で通過したあたりで、前田選手が3番手に上がり、その後、山口選手が徐々に後れたほか、4000mに向かう周回では藤本・四釜両選手が後退と、上位陣が徐々に絞られていくと、長かった列が縮まっていくことに。この周回で、前回2位の太田選手がマル選手に続く位置に浮上。4000mを10分57秒で通過しての11周目で、上位は太田・前田・鈴木・篠原・葛西・塩尻・相澤・井川・市田選手の順番。さらにマラソンのオリンピック出場が内定している赤﨑暁選手(九電工)が続いていく顔ぶれへと変わりました。5000mを13分42秒(2分45秒)で通過したところで、3番手にいた鈴木選手が前田選手をかわして太田選手の後ろへ。集団は13人に絞られ、その後も1周66秒のペースで周回を重ねていきます。6000mを16分28秒(2分46秒)で通過したときには、先頭は11人になりました。

残り10周となったところで、苦境に陥ってしまったのが塩尻選手。つまずいて転びそうになったことも影響して、なんとこの段階で、集団の後方に下がることになってしまったのです。ここでリズムを崩した塩尻選手は、次の周回で上位グループの7選手に突き放されてしまいました。その後、さらに井川選手も後れ、上位グループは、太田・鈴木・前田・篠原・葛西・相澤の6選手で7000mを19分13秒(2分45秒)で通過していきました。



終盤に向けて選手の順位に変動が生じたのが、残り7周の7200~7600mの周回でした。まず、社会人2年目の鈴木選手が太田選手を抜いてマル選手に並びかける位置へ。さらに、後方では、5番手に位置していた葛西選手が、篠原選手をかわして4番手に浮上します。この6人による上位争いから最初に離脱する形となったのは相澤選手。先頭の通過が21分58秒(2分45秒)となった8000m地点で、最後尾の篠原選手との差が5~6mほど開いてしまいました。次の周回で篠原選手がやや後れて、トップグループは鈴木・太田・前田・葛西の4選手に絞られ、残り3周へと入っていきました。

顔ぶれは変わったものの、今年もやはりレースはこの周回で大きく動く形となりました。最後尾にいた葛西選手がバックストレートでアウトに出ると、前にいた4選手とマル選手を抜き去り先頭に立って9000mを24分44秒で通過していったのです。さらに葛西選手が動き始めたとたんに反応した前田選手もトヨタ自動車勢をかわして2番手へと浮上します。これにつくことができたのは太田選手のみ。鈴木選手はマル選手とともに置き去りにされることとなりました。葛西選手は、その後もスパートを緩めず、残り2周の周回を63秒で回ってリードを広げると、鐘が鳴ったところで走りを切り替えて再スパート。離されつつも食い下がっていた前田選手を、ここで完全に突き放すと、最後の1周を58秒でカバーし、日本歴代4位となる27分17秒47で、日本選手権初優勝を果たしました。



2位で続いたのは、太田選手です。葛西選手がロングスパートした際に、いったんは前田選手からも後れをとっていましたが、最後の周回で前田選手を猛追。ホームストレートで逆転し、27分20秒94をマークして2年連続で2位の座に収まりました。残り60mでかわされてしまった前田選手も、27分21秒52・3位で堂々のフィニッシュ。昨年マークした自己記録(28分03秒51)を、一気に40秒以上も更新する圧巻のパフォーマンスでした。この記録はU20日本新記録で、日本歴代でも5位となる好記録です(葛西選手の優勝コメントはこちらを、前田選手の新記録樹立コメントは、こちらをご参照ください)。

4位は鈴木選手で、日本歴代8位に浮上する27分26秒67の自己新記録をマーク。1月の故障から急ピッチで仕上げてきた相澤選手は、27分34秒53で5位に食い込みました。学生2番手の6位でフィニッシュした篠原選手の27分35秒05も自己新記録。また、赤﨑選手も27分43秒84と、昨年マークした自己記録(27分48秒09)を更新して7位に入賞し、パリオリンピックのマラソンに向けて弾みをつける結果となりました。

日本記録保持者の塩尻選手は、27分54秒08・10位でレースを終了。WAワールドランキングのターゲットナンバー内への浮上が見込めなくなったことで、この種目でのオリンピック代表入りは厳しくなってしまいました。今後は、5000mでの代表入りを狙って、6月の日本選手権に向かっていくことになりそうです。


文:児玉育美(JAAFメディアチーム)
写真:フォート・キシモト、アフロスポーツ

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